保育士試験
過去問題
令和3年度(後期)
保育の心理学 令和3年度(後期)
次の文は、子どもの模倣に関する記述である。( A )~( E )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
生まれて間もない新生児期において、( A )とムーア(Moore, M.K.)は、視覚的に捉えた相手の顔の表情を、視覚的に捉えられない自己の顔の表情に写しとること、たとえば、「舌の突き出し」や「口の開閉」など、他者の顔の表情をいくつか模倣できることを示した。
ピアジェ(Piaget, J.)は、観察した他者の動作を直後に再現することを( B )、目の前には存在しなくても以前に見た他者の動作を再現することを( C )と呼んだ。( C )では、他者の行為をある期間、記憶を保持し、それを自分の中にイメージできる( D )能力が必要となり、これは( E )遊びにも必要な能力である。
【語群】
- ア メルツォフ(Meltzoff, A.N.)
- イ ローレンツ(Lorenz, K.)
- ウ 言語
- エ 社会模倣
- オ 延滞模倣
- カ 象徴
- キ 表象
- ク 即時模倣
- ケ 平行
(組み合わせ)
A | B | C | D | E | |
1 | ア | オ | エ | ウ | カ |
2 | ア | ク | オ | キ | カ |
3 | イ | エ | オ | ウ | カ |
4 | イ | オ | ク | ウ | ケ |
5 | イ | ク | エ | キ | ケ |
次のうち、社会的認知に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A スピッツ(Spitz, R.A.)は、見慣れた人と見知らぬ人を区別し、見知らぬ人があやそうとすると 視線をそらしたり、泣き叫ぶなど不安を示す乳児期の行動を「6か月不安」と呼んだ。
- B 乳児期の後半には、不安や困惑がある際に養育者の表情を確認し、自分の行動を決定するような 社会的統制を行う。
- C 2~3か月頃の乳児は、単色などの単純な刺激と人の顔の絵などの複雑な刺激を見せられると、 特に顔の絵などを好んで注視する傾向にある。
- D 新生児は、周囲の刺激とは関係なく微笑む。これはあやされることによって生ずるのではなく、 身体の生理的な状況によって生起する。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 〇 | 〇 | × | × |
3 | 〇 | × | 〇 | × |
4 | × | 〇 | × | × |
5 | × | × | 〇 | 〇 |
B‥✕ 不安などがある場合に養育者の表情を確認して自分の行動を決定するような行動を「社会的参照」といい、「社会的統制」でなないため誤りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「5」となります。「社会的統制」は、社会生活での秩序の維持のために個人の行動を規制したりする社会的メカニズムのことです。
次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
6歳児に「バッタに餌を1日に 10 回あげるとどうなるか」と質問したところ、「バッタはね、目が まわって死んじゃう。バッタは虫だけど、そこは人間と同じだから」と答えた。
【設問】
次のうち、【事例】に関連するものとして、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正し い組み合わせを一つ選びなさい。
- A ピアジェ(Piaget, J.)によると、子どもの考え方は、人間以外の生物に人間の特徴を拡張して適 用するアニミズムを表している。
- B 子どもの考え方は、生物を理解するのに役立つので、大人は尊重しつつ、同時にその限界を補う 配慮をする。
- C 子どもの考え方は、比較的豊かに持っている人間についての知識を基にして、人間以外の生物に 対して類推している。
- D 子どもの考え方は、直接経験を通して得られた印象に基づいて対象を把握する生活概念を示して いるが、その後、何らかの構造や原理との関係で対象を把握する科学的概念を持つようになる。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
2 | 〇 | 〇 | × | × |
3 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
4 | × | × | 〇 | × |
5 | × | × | × | 〇 |
A‥✕ アニミズムは生物・無機物を問わずすべてのものの中に命が宿っているという考え方のことであり、前操作期(2歳から7歳前後まで)に現れるとされています。
B‥〇 記述通りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「3」となります。
次のうち、言語発達に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 一語文期には、「ブーブー(車に乗りたい)」「ブーブー(車が来るよ)」というように、一語でい ろいろな意味機能を表すようになる。
- B 新生児は、おおよそあらゆる音韻の区別はできるが、ある環境である特定の言語に接すること で、次第にその言語圏で使われている音韻以外は、区別しにくくなっていく。
- C 乳児期の授乳時の母子間のやり取りには、相互交渉の原型がみられる。乳児は、これを通してコ ミュニケーションに必要な、互いに順番をとるターン・テーキングを学んでいる。
- D 2~3か月頃の乳児は機嫌がよいときに、泣き声とは異なる「アー」「ウー」のような、規準喃 語を発声する。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
2 | 〇 | 〇 | × | × |
3 | × | × | 〇 | 〇 |
4 | × | × | 〇 | × |
5 | × | × | × | 〇 |
B‥〇 記述通りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥✕ 記述は「クーイング」についての説明であり、「規準喃語」ではないため誤りです。
よって解答は「1」となります。
言葉は以下のように発達していきます。
2~3か月頃 クーイング(「アー、ウー」など母音を用いた発声の事です。)
5~6か月頃 喃語(「バブバブ」など、繰り返しの多音節からなります。)
6~7か月頃 基準喃語(子音と母音の構造を持ち、発音の基本となります。)
1歳頃 初語(「マンマ」など、意味のある言葉の事です。)一語文(「ママ(だっこ)」や「ママ(どこ?)」など一語で色々な意味を表します。)
1歳6か月頃 二語文(「ママ、来た」などで、最初に出る言葉は名詞が多いです。)
次のうち、A~Dに示された子どもの行動の背景にある認知発達として、適切な用語の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 「お誕生日にママとレストランに行って、ピザを食べたよ」と、久しぶりに会った人に言う。
- B 「クレヨンと、のりと、はさみを出してね」と言われ、お道具箱の中から指示通りに持ってくる。
- C 保育所で読み聞かせしてもらった絵本の内容を他者に話す。
- D おつかいを頼まれて、買うものを何度も声に出して忘れないように繰り返す。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | エピソード記憶 | 同時処理 | 記憶の再認 | レスポンデント |
2 | エピソード記憶 | 短期記憶 | 記憶の再生 | リハーサル |
3 | 潜在記憶 | 同時処理 | 記憶の再認 | レスポンデント |
4 | 潜在記憶 | 同時処理 | 記憶の再生 | レスポンデント |
5 | 潜在記憶 | 短期記憶 | 記憶の再生 | リハーサル |
B‥「短期記憶」何らかの作業などに必要なほんの一時的な記憶の事です。
C‥「記憶の再生」経験したことを検索や手がかりを使わずにそのまま思い出す事です。
D‥「リハーサル」記憶するべき項目を何度も唱えたりして繰り返す事です。
よって解答は「2」となります。
次の保育所での【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
5歳児クラスで、Mちゃん、Nちゃんがおままごとをしていた。料理を作り、お皿の上に並べてい るところに、他の遊びをしていたJちゃんが来て、「お皿を貸して」と言った。Mちゃんがすぐに 「ダメ、使っているから」と断った。それを聞いたJちゃんが、「えー、私たちも今、使いたいのに。 少しくらい貸してよ」と言った。その様子を見ていたNちゃんが、「少しなら持って行っていいよ」 と言い、Mちゃんも使っていないお皿を探して、Jちゃんに渡した。
【設問】
【事例】を説明する記述として( A )~( D )にあてはまる用語を【語群】から選択した 場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。 Jちゃんは、( A )を理解しているため、お皿を黙って取らずに、「お皿を貸して」と言えた。 Mちゃんに断られたJちゃんは、「私たちも使いたい」と( B )をしていた。Jちゃんの言うこ とを耳にして、Nちゃんはお皿を持っていくことを許可した。その様子を見たMちゃんは、( C ) をしてお皿を貸していた。このようなやり取りの中で、保育者が介入しなくても、子どもたちが自分 たちで問題を解決できるような( D )が育まれていく。
【語群】
- ア 恣意的ルール
- イ 社会的規範
- ウ 自己評価
- エ 自己抑制
- オ 自己主張
- カ 社会的スキル
- キ レジリエンス
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | ア | ウ | エ | カ |
2 | ア | オ | ウ | キ |
3 | イ | ウ | オ | カ |
4 | イ | オ | ウ | キ |
5 | イ | オ | エ | カ |
社会や集団の中で制度化された意見・態度・慣習やルールの事です。
B‥オ「自己主張」
自分の意見や考え、欲求を外に向かって発言したり実現する働きの事です。
C‥エ「自己抑制」
自分の欲求や感情、目標などを我慢・抑制したり遅延したりする事です。
D‥カ「社会的スキル」
円滑で適応的な対人関係を促す能力や、社会生活に適応していくために必要な技能の事です。
よって解答は「5」となります。
次のうち、トマス(Thomas, A.)らの気質に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 気質を分類する際に、活動水準、順応性、反応の強さなどを含めた5次元について観察し、その 程度によって気質を3つのタイプに分類した。
- B 子どもの行動を観察し、その行動スタイルの違いから、現象面に基づいて気質を測定した。
- C 気質の分類によると、「扱いやすい子どもたち(easy children)」のタイプは全体の約10%だった。
- D 乳幼児期に「扱いにくい子どもたち(difficult children)」と分類されたタイプの子どものうち、 約18%には後に問題行動が生じた。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
3 | 〇 | × | 〇 | × |
4 | × | 〇 | × | × |
5 | × | × | 〇 | 〇 |
B‥〇 記述通りです。
C‥✕ 「扱いやすい子どもたち」は全体の約40%であり、10%ではないため誤りです。そのほか「平均的な子」が35%、「扱いやすい子」は40%、「扱いにくい子」または「順応が遅い子」が5%となっています。
D‥✕ トマスらは、気質は変化しうるものであり、乳児期と青年期との関連性は極めて弱いとしているため誤りです。
よって解答は「4」となります。
トマスとチェスは、136人の子どもを乳児期から青年期の成長過程を追跡調査し、その結果気質が9つの基準に分類できることを明らかにしました。
①活動の活発さ②注意の逸れやすさ③粘り強さ④新しい環境への反応の仕方⑤規則正しさ⑥変化に対する順応の速さ⑦五感の敏感さ⑧喜怒哀楽の激しさ⑨ベースの気性
上記9つの気質の組み合わせで、「扱いやすい子」「扱いにくい子」「順応が遅い子」「平均的な子」の4つのタイプに分けました。
次の文は、認知の発達に関する記述である。( A )~( E )にあてはまる用語を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
ピアジェ(Piaget, J.)は、子どもが世界を認識する過程には、( A )に異なる4つの段階があ ると考えた。まず、誕生から2歳頃までは「感覚運動期」と呼ばれ、子どもは身近な環境に身体の感 覚や動作を通して関わり、外界を知っていく。次に、2~7歳頃は「( B )」と呼ばれ、イメージ や言葉を用いて世界を捉えることが可能になるが、物の見かけに捉われやすく論理的な思考には至ら ない。学童期に相当する「( C )」では、量や数の( D )を理解して脱中心的な思考が可能に なる。その後、おおよそ 12 歳以降は最終段階である「( E )」にあたり、記号や数字といった抽 象的な事柄についても論理的な思考が可能になっていく。
【語群】
- ア 質的
- イ 前操作期
- ウ 量的
- エ 形式的操作期
- オ 抽象的操作期
- カ 保存
- キ 永続性
- ク 具体的操作期
(組み合わせ)
A | B | C | D | E | |
1 | ア | イ | オ | カ | エ |
2 | ア | イ | ク | カ | エ |
3 | ウ | エ | オ | キ | ク |
4 | ウ | エ | ク | カ | オ |
5 | ウ | ク | エ | キ | オ |
B‥イ「前操作期」
C‥ク「具体的操作期」
D‥カ「保存」
E‥エ「形式的操作期」
よって解答は「2」となります。
ピアジェの発達段階説は、質的に異なる4つの段階があるとしました。
①感覚運動期 (0~2歳頃)
②前操作期 (2~7歳頃)
③具体的操作期(7~12歳頃)
④形式的操作期(12歳頃~成人)
次のうち、知的機能の発達に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 結晶性知能は、図形弁別や図形構成課題によって測られ、生育・教育環境の影響を比較的受けな いとされる知能であり、青年期以降になると漸減する。
- B 流動性知能は、語彙や社会的知識に代表されるもので、学習経験の影響を相対的に受けやすいと される知能であり、高齢期に至るまで、緩やかに増加する。
- C ワーキングメモリ(作業記憶・作動記憶)は、思考や問題解決などの際に必要な情報を一時的に 保持し、それを操作し、再体制化するシステムであり、中年期以降に衰退する。
- D 成人期以降の知的能力の発達・変化は、少なくともどのような能力も一様に衰退するものではな く、多様で多方向である。また個人を取り巻く環境や社会・文化の影響を強く受けるものである。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 〇 | × | 〇 | × |
3 | × | 〇 | × | 〇 |
4 | × | × | 〇 | 〇 |
5 | × | × | × | × |
B‥✕ 流動性機能とは、、図形弁別や図形構成課題によって測られ、生育・教育環境の影響を比較的受けないとされる知能のことであり、記述は結晶性知能についての説明であるため誤りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「4」となります。
次の文は、青年期に関する記述である。( A )~( D )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
青年期は、家族以外の人との親密な関係を深めていく中で、青年は( A )の確立という新たな 課題に直面する。エリクソン(Erikson, E.H.)は、青年期が、大人としての責任と義務を問われず に、自由に何かに打ち込み、挫折し、さらにまた何かを探し求めるといった経験、あるいは、様々な 危機を経ることが重要であるとして、この期間を( B )期間であると考えた。 その後、マーシア(Marcia, J.E.)は、( A )の状態を4つの類型に分けて考える( C )を 提唱した。この4類型の中の一つである( D )は、これまでに危機を経験していることはなく、 自分の目標と親との目標の間に不協和がなく、どんな体験も、幼児期以来の信念を補強するだけに なっているという、融通のきかなさが特徴的である。
【語群】
- ア アイデンティティ
- イ モラトリアム
- ウ アイデンティティ・ステイタス
- エ 早期完了
- オ モダリティ
- カ 達成
- キ 拡散
- ク アイデンティティ・クライシス
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | ア | イ | ウ | エ |
2 | ア | イ | エ | カ |
3 | ア | オ | ク | カ |
4 | ウ | イ | エ | キ |
5 | ウ | オ | ク | エ |
B‥イ「モラトリアム」大人としての責任や義務を猶予されている期間に自由に何かに打ち込みんだり、挫折したり、さらにまた何かを探し求めたりといった経験のことです。
C‥ウ「アイデンティティ・ステイタス」マーシアは、エリクソンの発達理論を用いてアイデンティティ・ステータスを作りました。
D‥エ「早期完了」危機的状況の経験はなく、自分と親の目標の間に不協和がないことです。
よって解答は「1」となります。
エリクソンの発達段階説は、1960年代頃の欧米の男性をモデルに組み立てられており、それぞれの段階に発達課題があり、それが達成できないときに心理的な危機の状態になるとしています。
マーシアはアイデンティティ・ステイタスを、4つの状態に分類しました。
①アイデンティティ達成②モラトリアム③早期完了④アイデンティティ拡散
次のうち、中高年期における家族関係に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 親は子離れにあたって、親子関係を再編させること、夫婦の生活や職業上の達成に再焦点化する こと、自身の高齢期に関心を持ち始めることなどの変化が必要とされる。
- B 親は、子どもが家から巣立っていく時期に、子どもを送り出すことの淋しさや、子どもの世話を するという目的を失った喪失感で、抑うつ症状や心身症などを示すことがある。
- C 定年退職や、自分にとって重要な他者の死に遭遇した際に、その人間関係の喪失が深い空虚感を もたらすものとなる。自分の周りに社会的ネットワークを築いていた人ほど、このような危機に効 果的に対処することができると考えられる。
- D 個人が有する社会的ネットワークで、身近で日頃から頼りにしている人との関係をどのように維 持しうるのかという観点でモデル化したものが、ソーシャル・コンボイと言われる。生涯発達の各 時点におけるコンボイの成員数や、種類には変化が生じると言われる。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
3 | × | 〇 | × | 〇 |
4 | × | × | 〇 | × |
5 | × | × | × | 〇 |
B‥〇 記述通りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「1」となります。
中高年期は、40~64歳の25年間をいい、身体的、社会的、家庭的、心理的に変化の多い時期です。
また、安定と不安定、若さと老い、獲得と喪失が共存する時期で、今まで積み重ねてきたものを問い直し、時には人生の危機に直面する時期でもあります。
次のうち、保育所における保護者の状況に配慮した個別の支援に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 外国籍家庭や外国にルーツをもつ家庭の場合は、日本語によるコミュニケーションが取りにくい こと、文化や習慣が異なることがあるため、日本の生活様式を積極的に取り入れ、早く適応してい くよう配慮する必要がある。
- B 多胎児、低出生体重児、慢性疾患のある子どもの場合、保護者は子育てに困難や不安、負担感を 抱きやすい状況にあることなどを考慮に入れ、子どもの生育歴や家庭状況に応じた支援をする必要 がある。
- C 家庭を取り巻く問題に不安を感じている保護者は、その悩みを他者に伝えることができず、問題 を抱え込む場合もあるが、家庭の状況や問題の把握はできないので、対応する必要はない。
- D 保護者に対しては、子どもの発達や行動の特徴、保育所での生活の様子を伝えるなどして子ども の状況を共有し、保護者の意向や思いを理解していく。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
2 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
3 | 〇 | × | 〇 | × |
4 | × | 〇 | × | 〇 |
5 | × | × | × | 〇 |
B‥〇 記述通りです。
C‥✕ 悩みや不安を他者に伝えることができない保護者に対しても、家庭の状況や問題の把握を心掛け、対応する必要があります。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「4」となります。
次の保育所での【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
5歳児クラスの女児達の遊び場面である。Kちゃんが「先生、Pちゃんがずっと怒っているよ」 と、困った顔で担当保育士に相談に来た。そこで、保育士はKちゃんと一緒に遊んでいた場へ行き、 大型積み木で家を作っているPちゃん、Qちゃんに話しかけた。
保育士:(a)「わぁ、今日はまた、とっても素敵な、大きなおうちができそうですね」
Qちゃん:「6階建てなの」 そのことから、子ども達が大きな家のイメージをもって作っていることが伝わった。
保育士:(b)「あのね、Kちゃんが、ひょっとしてPちゃんが怒っているんじゃないかって心配しているんだけど、何かあったの?」
Pちゃん:「まだ工事中だったのに、Kちゃんがゆり組さんを入れたから、ダメッ!って、言ったの。できあがるまで、待っていてほしかったのに」 3歳児クラス(ゆり組)の女児が一人、大型積み木の家の中に入っていた。
保育士:「そうなんだ。Pちゃんは、できあがったら入れてあげようと考えていたんだね」
Kちゃん:「私は、危ないから、気をつけるんだったらいいよって言ったの」
保育士:(c)「そうだったの。2人とも遊びに来たゆり組さんのこと、考えていたんだよね」(d)「どうしようかって、みんなでもう少し相談すればよかったかもね」「よくあるの、こういうこと。自分はいいと思ってやったことが、そうではなくって、嫌な気持ちになってしまうこと。先生にもよくあるよ。今度、同じことがあった時に、気をつけたらいいよね。それでどうする?遊びに来たゆり組さん。このまま遊んでいてもいいの?」
Pちゃん:「それでいい」 その後、積み木の場で遊びは続いていった。
【設問】
【事例】の文中にある下線部(a)~(d)を説明する語句を【語群】から選択した場合の最も適 切な組み合わせを一つ選びなさい。
【語群】
- ア 子どもの気持ちの代弁
- イ 怒りや誤解を解く発言
- ウ アドバイス
- エ 子どものイメージに近づいた発言
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | ア | エ | ウ | イ |
2 | イ | ウ | エ | ア |
3 | ウ | ア | イ | エ |
4 | ウ | イ | ア | エ |
5 | エ | ア | イ | ウ |
子ども達が作っている家についての発言です。
b‥ア「子どもの気持ちの代弁」
KちゃんがPちゃんに言いたいであろう気持ちの代弁です。
c‥イ「怒りや誤解を解く発言」
KちゃんもPちゃんと同じく、ゆり組さんの子どものことを考えていたことを伝え、誤解を解こうとしている発言です。
d‥ウ「アドバイス」
解決方法を提案しています。
よって解答は「5」となります。
次のうち、親子関係に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 子どもが2人いた場合に、母親と長子の関係が母親と次子の関係に影響することはあるが、その逆はない。
- B 親の子どもに対する考え方や関わりには、親自身の被養育経験やこれまでに出会ってきた人、家庭の状況等の様々な要因が影響している。
- C 子育てに関する知識がなく、身近に相談や助言を求める相手がいないことで、親が子どもに身体的・精神的苦痛を与えるような関わりをしてしまうことがある。
- D 親は子どもに対して「できる」「できない」といった目に見える発達に意識が向いてしまうと、他児との比較により子どもの育ちに不安を感じることがある。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
3 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
4 | × | × | × | 〇 |
5 | × | × | × | × |
B‥正答 記述通りです。
C‥正答 記述通りです。
D‥正答 記述通りです。
よって解答は「3」となります。
次の保育所での【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
0歳児クラスの子ども達が散歩をしている時に、犬が近くにいるのを見つけた保育士は「わんわんがいるよ、かわいいねぇ」と言って犬を指でさし示した。Sちゃんは(a)保育士が指さした方向を見て、嬉しそうに「あっ、あっ」と言いながら(b)犬を指でさして、(c)保育士の顔と犬を交互に見た。そして、保育士が「わんわんにバイバイしようか」と手を振ると、それを見てSちゃんも(d)犬に手を振った。
【設問】
【事例】の文中にある下線部(a)~(d)を説明する語句を【語群】から選択した場合の最も適切な組み合わせを一つ選びなさい。
【語群】
- ア 応答の指さし
- イ 共同注意
- ウ 三項関係
- エ 模倣
- オ 叙述の指さし
- カ 二項関係
- キ 選好注視
- ク 連想
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | イ | ア | ウ | エ |
2 | イ | オ | ウ | エ |
3 | イ | オ | カ | ク |
4 | キ | ア | カ | エ |
5 | キ | オ | カ | ク |
ひとつの空間の中で、他の人と同じように物体や人物に対し注意を向けることです。
b‥オ「叙述の指さし」
他の人と情報を共有・共感したいものなどを指差しで伝えることです。
c‥ウ「三項関係」
生後9ヶ月以降の発達過程の特徴であり、子どもが他者と何らかの対象(おもちゃなど)への経験をともにすることです。
d‥エ「模倣」
他者の行動と同様・同類の行動をとることです。
よって解答は「2」となります。
ア「応答の指差し」は、相手の質問に答えるような指さしのことです。
カ「二項関係」は、子どもと他者(父、母、先生等)や、子どもと玩具といったように、ある特定の対象と1対1で関係を結んでいる状態のことです。
次のうち、保育士の幼児との関わりとして、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 描きたいものはあるが、それを描き表すためのスキルが伴っていない子どもが、保育士に「○○を描いて」と求めてきても、自分の思ったままに描いてみるよう励ますことが常に大切である。
- B 主体的に活動するとは、子どもがただ自分の好きなように振る舞うことである。
- C 自分に愛情をもって温かい目で見守ってくれる保育士の存在により、子どもは安心して自分らしい動きができ、様々な物事への興味や関心が広がる。
- D 保育士の受容的な関わりは、子どもの自分でできると思える自信や自己肯定感を高め、自ら挑戦しようとする気持ちを支える。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
2 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
3 | 〇 | × | 〇 | × |
4 | × | × | 〇 | 〇 |
5 | × | × | × | 〇 |
B‥✕ 主体的に活動するとは、その子なりの願いや目的を持って活動に取り組むことであり、子どもが好きなように振る舞うことではありません。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「4」となります。
次のうち、保育所の自己評価に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 保育所の自己評価は、保育士等の自己評価結果に基づいて、施設長と職員との話し合いを通して 行われる。
- B 保育士等の自己評価において課題になっていることなどを、短期間に全て改善するように進める ことが大切である。
- C 職員間で共有する資料には、保育記録をはじめ、保育所が実施した様々な調査結果、あるいは保 育所に寄せられた要望や苦情等も含まれる。
- D 保育の内容等の評価の公表を通して、保護者及び地域住民等から理解を得るとともに、評価に関 する意見を聴くことが望ましい。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2 | 〇 | 〇 | × | × |
3 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
4 | × | 〇 | × | × |
5 | × | × | × | 〇 |
A‥〇 記述通りです。
B‥✕ 保育所の自己評価は、保育の質の向上を図るためのものであり、課題を短期間に改善することが目的ではないため誤りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「3」となります。
次の【表】は、「第 15 回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(国立社会保障・人口問題研究所)における、「夫婦が理想の子ども数を持たない理由」について、妻の年齢別に示したものである。以下の【設問】に答えなさい。
【設問】
次のうち、【表】に示されている「夫婦が理想の子ども数を持たない理由」に関して、適切な文の組み合わせを一つ選びなさい。
- A 「自分や夫婦の生活を大切にしたいから」の選択率は、他の年齢層に比べて 30 歳未満で高い。
- B 30 ~ 34 歳では、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」に次いで、「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」の選択率が高い。
- C 30 歳代では、「自分の仕事(勤めや家業)に差し支えるから」という回答が他の年齢層に比べて多い。
- D 35 ~ 39 歳では、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」に次いで、「高年齢で生むのはいやだから」の選択率が高い。
(組み合わせ)
A | B | |
1 | A | B |
2 | A | C |
3 | B | C |
4 | B | D |
5 | C | D |
A‥✕ 「自分や夫婦の生活を大切にしたいから」の選択率が高いのは30~34歳であり、30歳未満ではない為、誤りです。
B‥✕ 30~34歳で2番目に選択率が高いのは「自分の仕事(勤めや家業)に差し支えるから」であり、「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」ではな為、誤りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥〇 記述通りです。
よって解答は「5」となります。
次のうち、妊娠中及び出産後の精神医学的問題に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A 妊婦の抑うつや不安は、子どもの死産、早産、低体重出生などのリスクとなる可能性が高い。
- B 授乳中の母親への向精神薬の投与は、母乳を介しての子どもへの影響を考慮して、全面的に行われるべきではない。
- C 出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に認められる妊婦を「特定妊婦」という。
- D 産後うつ病は、出産直後から2週間程度で改善し、症状は子どもの発達には影響しない。
- E 親が我が子を愛おしく思い、親として守ってあげたいと思うといった、子どもに抱く情緒的絆を持ちえていない状態を「反応性アタッチメント障害」という。
(組み合わせ)
A | B | C | D | E | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × |
2 | 〇 | × | 〇 | × | × |
3 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 |
4 | × | 〇 | × | 〇 | 〇 |
5 | × | × | 〇 | × | 〇 |
B‥✕ 母乳からの薬剤摂取量は少なく、子どもへの大きな影響はないと考えられているため、必要であれば投与を行うこともあります。
C‥〇 記述通りです。
D‥✕ 産後うつ病は分娩後の数週間から数か月後まで続く極度の悲しみやそれに伴う心理的障害が起きている状態のことであり、出産直後から2週間程度で改善しない場合もある為、誤りです。
E‥✕ 「反応性アタッチメント障害」とは、過度に不適切な養育環境で育った子どもにみられる対人関係の障害であり、子どもに抱く情緒的絆を持ちえていない状態のことではありません。
よって解答は「2」となります。
次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
Wちゃん(4歳、女児)は、保育所では活発で他の園児とも楽しく遊ぶ子である。身長体重は平均よりやや高く、重い。これらから保育所では、Wちゃんを特に気になる子どもとは考えていなかった。保育所には母親が送り迎えをしている。母親は、しばしば迎えの時間を忘れたり、間違えて遅くなることがあり、保育所はその都度、母親に電話連絡した。
また、母親は冬であってもビーチサンダルで保育所に送り迎えし、Wちゃんが、「靴はいて」と話しても、頓着がないようである。Wちゃんは、母親が迎えに来ると、遅れた場合は「まただー」とややごねるが、そのあと保育所で当日あった話などをして、手をつないで楽しそうに帰って行くことが多い。
保育士が家庭訪問した時の観察では、Wちゃんにとって身体的に危険なほどではないが、家は整頓、片付けされていなかった。母親自身も家事全般が苦手であると話している。Wちゃんも「カレーライスにカレーをかけないで、食卓に出すよ」などと話したこともあった。Wちゃんは、不潔な服を着、髪もぼさぼさで登園することが時としてある。Wちゃんはそれを嫌がっているものの、「朝時間がなかったから」などと保育士に伝えていた。
【設問】
次のうち、保育所のWちゃんと母親への理解や対応として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
- A Wちゃんが重度のネグレクトを受けている可能性が高いため、至急の児童相談所通報も視野に入れ、保育所で会議を行う。
- B 母親の性格上のだらしなさや常識のなさを、Wちゃんへの深刻な悪影響も含め母親に指摘して訂正するよう導く。
- C 母親とさらに時間をとって、困っていることや、通院歴などを聞き、母親理解を深める。
- D Wちゃんに、母親から不適切で悪い対応を受け辛いであろうことを伝え、Wちゃんを保育所では情緒的に支え続ける。
(組み合わせ)
A | B | C | D | |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
2 | 〇 | 〇 | × | × |
3 | × | 〇 | × | × |
4 | × | × | 〇 | × |
5 | × | × | × | 〇 |
B‥✕ Wちゃんと母親が手をつないで楽しそうに帰っていく様子などから、母親の態度や対応がWちゃんに深刻な悪影響を与えているとは言えない為、誤りです。
C‥〇 記述通りです。
D‥✕ Wちゃんの発言をみると「辛い」と思っているとは断定はできず、母親から不適切で悪い対応を受けて辛いであろうと断定して伝えることは適切とは言えない為、誤りです。
よって解答は「4」となります。
メルツォフはムーアと共に「新生児模倣」について研究しました。
新生児模倣とは、新生児期の赤ちゃんが目の前にいる人と同じ顔の動き・動作をすることです。
B‥ク「即時模倣」
他者の動作を観察直後にすぐその場で再現することです。
C‥オ「延滞模倣」
観察直後ではなく、時間が経過してから観察した動作を再現することです。ピアジェの発達段階説(認知発達段階説)では、前操作期(2歳から7歳前後まで)に延滞模倣(遅延模倣) が出現するとされています。
D‥キ「表象」
目の前にそれが存在しなくても、自分の中に想起したりイメージしたりできることです。
E‥カ「象徴」
象徴遊びはおままごとなどのごっこ遊びなどであり、見立てるためには表象が必要となります。
ピアジェの発達段階説(認知発達段階説)では、前操作期(2歳から7歳前後まで)に象徴機 能が発達するとされています。
よって解答は「2」となります。