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保育士試験について

保育士試験に出てくる教育書 エレン・ケイ「児童の世紀」について

保育士試験に出てくる教育書 エレン・ケイ「児童の世紀」について

教育学や保育学においては必ず登場する「エレン・ケイ」。「エレン・ケイ」は、19世紀スウェーデンの社会思想家、教育学者であり、特に幼児教育の重要さを説いた点で、教育史上において著名なフェミニストの1人です。 「エレン・ケイ」を代表する『児童の世紀』は19世紀の最後の年である1900年に出版され、20世紀こそ「児童の世紀」と名付けて、世界の新教育運動に思想的指針を与えた人物です。 今回は「エレン・ケイ」やその著書『児童の世紀』がどのようなものであったかについてご紹介いたします。

スウェーデンの女性教育家「エレン・ケイ」

「エレン・ケイ」は1849年に生まれ、自由主義政治家の父、貴族出身の母の下で育ちますが、ほとんど学校へ通わず、読書と知識人らとの交流の中で自己の思想を確立していったとのことです。 新ルソー主義の立場に立って、教育、芸術、婦人問題、平和問題など様々な社会問題に切り込んだ著作を残しました。

児童中心主義としての立場で知られていますが、「エレン・ケイ」の思想は大きく分けて3つあり、1つ目は恋愛至上主義、2つ目は児童中心主義、3つ目は母性主義と言われています。

「エレン・ケイ」の著書は大正デモクラシー期の日本において、女性文芸誌『青鞜』などを通して紹介され、日本の婦人運動に絶大な影響をもたらしました。
特に日本の思想家、フェミニストでもある平塚らいてうは「エレン・ケイ」の女性思想に完全に傾倒し、最も忠実な実践者として知られています。

「エレン・ケイ」の教育理

「エレン・ケイ」の教育理念を表す言葉として以下の名言を残しています。

「どんな段階でも子どもにはありのままの現実を体験させるようしなければならない。
バラの刺を最初から絶対に抜いてはいけない」

「エレン・ケイ」は、子どもの本来的な善性を信頼し、保護者による干渉のための努力は、百分の一だけにとどめ、残りの百分の九十九は「干渉でなく目立たない指導」に使用すべきだ、としています。 子どもに干渉しすぎる親を「やさしすぎる親」「支配欲の旺盛な親」という二つのタイプに分け、一方は子どもがそれぞれ「生命観、幸福の理想、趣味、職業をもつ権利」を持っていることを理解せずに干渉し、 もう一方は「親が子どものためにあるのではないのと同様に、子どもも親のためにあるのではない」という認識がないとしています。

上記のような親はついつい子どものすることに口を出したり、先回りして行動を抑制しがちですが、子どもを自分の支配下に置き、コントロールしようとする欲求を思いとどまり、 「親自身の行動によって子どもに良い影響を与えよ」としています。

また、体罰については怒りとも言えるような強い口調で批判しており、 体罰は子どもに深刻な影響を与えるもので、「体刑は卑怯者を一層卑怯にし、強情者を一層強情にし、頑固者を一層頑固に」し、「この世のあらゆる悪の根源である二つの感情、憎しみと恐怖を強める」と断じています。

「エレン・ケイ」の「児童の世紀」

「児童の世紀」は1900年に出版され、11カ国で翻訳される大ヒットとなり、国際的にも大きな反響を引き起こしました。
日本では1906年に大村仁太郎がドイツ語版から、1916年には原田実が英語版から翻訳し、大正時代の児童中心主義的立場に立った新教育運動に大きな影響を与えましたが、富国強兵の背景からこの新教育が浸透するには至りませんでした 。

タイトルからも、児童教育について論じられているのかと思いますが、「児童の世紀」の内容は女性解放運動や労働問題、宗教批判など、19世紀末の社会問題が全面的に論じられる中で子どもについても言及されている、という形になっています。 19世紀から20世紀は、先進諸国で近代国家へ成長するための様々な体制づくりが進められる中、権力中心の学校教育の在り方を否定し、その教育がむしろ子どもの成長を阻害していると厳しく批判しました。

名言「20世紀こそ児童の世紀」とは、20世紀こそは子どもが幸せに育つことのできる平和な社会を築くべきであるという意味で、「教育の最大の秘訣は、教育しないことだ」とも述べました。

エレン・ケイは1926年4月に77歳の生涯を閉じましたが、その思想は第一次世界大戦後の「ジュネーブ宣言」(1924年)、第二次世界大戦後の「世界人権宣言」(1948年)、「子どもの権利宣言」(1959年)などに引き継がれ、 世界中で多数の犠牲を払った後、国際的に子どもの最善の利益を大前提として、子どもの権利を保障し、子どもは人間としてのあらゆる権利を行使する主体として捉えられることになりました。 そしてその児童中心の教育のありかたは、今の教育現場において、今もなお生き続けているのです。

「児童の世紀」は読み易い形で多数出版されていますので、保育士試験をきっかけにぜひ手に取り、エレン・ケイの思想にふれてみてはいかがでしょうか。

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