山形県中央児童相談所の一時保護所では、子どもの暴力を防ぐ取り組みが行われています。子どもにとって安心で安全な場所にすることが目的ですが、子ども自身が非暴力を基盤にして育ってほしいという願いもあるそうです。
2年前に導入した「安全委員会方式」と「魔法の言葉」
魔法の言葉とは
①たたかない、口で言う
②やさしく言う
③相手が悪くてもたたかない
の3つを言います。
山形県中央児童相談所では2年前にこの「魔法の言葉」を合言葉にする「安全委員会方式」を導入しました。
また、一時保育所で過ごす子どもひとりずつに月に2回以下の様な聞き取りを行っています。
①暴力をしたか、されたか
②体をさわったか、さわられたか
③暴力を見たり聞いたりしたことがあるか
その他にも不安なこと、夜眠れているか、どんな夢を見るかなどもたずねています。
そして子どもたちへの聞き取りの結果が毎月開かれる安全委員会で報告されます。
委員会のメンバーは、児童相談所の職員8人と児童養護施設長など外部の4人。保護所内で起こった問題と、それにどう対応したかなどの説明もあります。
子どもの行動の見方や対応などについて話し合います。
保護された当初は暴力的だった子どもでも、職員が根気よく魔法の言葉を使って働きかけを行うことで、暴力が減ったとの報告もあります。
一時保護所ってどんなところ?
虐待などで児童相談所が保護した子ども達が最初に身を置く場所。2020年4月現在、全国に143か所あります。
保護期間は原則2ヶ月間ですが、1年に及ぶ子どももいます。
保護期間中に児童相談所は子どもや家族などに話を聞いて調査し、家庭に帰せるかどうか判断します。
一時保護は子どもがまた来たいと思えるような場所であることが望ましいですが、人権侵害に近い厳しい規則や罰があるところもあり、課題を指摘される保護所もあります。
安心で安全な生活を体験する場としたい
「安全委員会方式」は、九州大学名誉教授で臨床心理学者の田嶌誠一さんが、施設の中で暴力をなくすために16年前から提唱している方式です。
「非暴力」を浸透させるために、魔法の言葉を合言葉にしました。
子どもからの聞き取りを通じて、潜在化している暴力も早期に発見ができます。
今では全国で33の施設が導入していますが、児童相談所で導入するのは山形県中央児童相談所が初めてだそうです。
当初は事務量が増えることを心配する職員もいたそうですが、導入から2年して子ども達の変化に手ごたえを感じているそうです。
一時保護所は、家庭が安心安全な場所ではなかった子どもにとって、自分を大切にして守ってくれる大人と出会い安心・安全な生活を体験する場所でなければなりません。
これからもその役割を果たしていってくれることを望みます。
2021年3月25日(木)朝日新聞朝刊より出典