3月末に発表された「異次元の少子化対策」のたたき台。
2024年度からの3年間を「集中取組期間」とし、「加速化プラン」が明記されました。
以前から伝えられていた児童手当をはじめとした経済的支援、共働き世帯への支援、そして子育てサービスへの拡充についてです。
しかし、保育現場からは「現状と変わらない」といった声も挙がっています。
「子ども・子育て政策強化」の試案
上記の通り集中取組期間の3年間の「加速プラン」、「子ども・子育て政策強化」の試案について見ていきましょう。
全てに渡り、明確な制度変更を行うこと、その期間などは曖昧になっていました。
経済的支援
児童手当の拡充を始めとする経済的支援の強化は主軸となるように言われてきました。
所得制限の撤廃に子どもが多い世帯への増額、高校卒業までの支給期間延長、授業料後払い制度や給付型奨学金の対象拡大と学校給食費無償化などあれもこれもといった支援が網羅されています。
出産費用の保険適用化や子育て世帯への住宅支援強化も含まれていますが、詳細な制度の設計はほぼ先送りです。
経済的支援に対する予算規模も明らかになっていません。
つまり、財源の目処が立たないまま実現に至らない可能性があるのです。
共働き・共育ての推進
共育てとは、子どもと接している保護者の方も子どもと一緒に学び、成長するという意味です。
自営業やフリーランスを対象にした育児期間中の国民保険料免除制度の創設、約1ヶ月の間、育休給付金の手取り額を性別関係なく10割相当へ引き上げなど、働き方に関係なく結婚や出産に希望をもってもらうための環境整備の一環として発表されました。
また、育休を支援する子育て支援に協力的な中小企業には助成措置の強化も盛り込まれています。
子ども・子育てサービス拡充
保育施設、保育士に関連する「加速化プラン」。
保護者の働き方を問わず、保育施設などに「時間単位で預けられる制度の創設」や「放課後児童クラブの受け皿の拡大」、そして「保育士の配置基準改善と処遇改善」が主な柱として発表されました。
いかがでしょうか。
いずれも実施時期や制度創設などは未定で、財源の目処も立っていません。
もし保育士の処遇改善などのための財源確保の具体例が進めば、国民への負担増が話題に上がり、反発される可能性もあるのです。
26年度までに実現できるのか見通しが立ちません。
配置基準の改訂は見送り
期待されていた3月末の保育士配置基準の改訂。
しかし蓋をあけると保育士一人に対する子どもたちの人数の「配置基準」の変更はありませんでした。
配置基準を変えると保育士不足で人員確保をできない、運営ができない保育施設がでる可能性が出てくることが背景にあるためです。
受け皿を増やして待機児童解消に備えているため基準の改定は見送られたのでしょう。
その代わり、保育士が1人で受けもつ1歳児を6人から5人へ、4,5歳児を30人から25人へできるように、運営費を増額し、暗に人件費に充てるよう方針を示しました。
御存知の通り、2015年度から政府は、3歳児は「保育士1人で20人」から、配置基準は替えないまま「保育士1人で15人」配置ができるように、今回のたたき台と同じく施設側に費用を給付しています。
しかし、2023年現在、運営費が増えているはずなのに多くの保育施設が保育士基準を上回る保育士の配置ができていません。
今回の試案も結局「この程度じゃ現状と変わらない」と保育現場に思わせてしまう内容であったといえるでしょう。
制度も期間も財源も曖昧な発表に落胆した保育施設や保育関係者もいらっしゃるのではないでしょうか。
今後それを覆すような制度が生まれることが期待されます。