「医療的ケア児」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。
この度、6月11日に「医療的ケア児支援法」が可決され、秋にも施行される予定となりました。これからは保育園に通う医療的ケア児が増えていくことが予想されます。
どんな背景があったのでしょうか。
増え続ける医療的ケア児
医療的ケア児とは、病気や障害のために口からものが食べらず、胃ろうというお腹に開けた管から水分や栄養分と摂取したり、タンを機械で吸い取ったり、人工呼吸器を装着していたりなど、日常的に高度な医療ケアが必要な子どもたちのことを指します。
医療的ケア児は全国に2万人いるとされ、年々増え続けており、この10年で倍増しています。そんな子どもたちや親を支援するのが狙いとなっています。
日本は世界でも最先端の周産期医療が受けられる国として知られています。そのため、数十年前だったら生きられなかった難病や障害を持って生まれた赤ちゃんでも生き延びられるようになってきました。
多くの命が救えるようになった一方で、日常的に高度な医療を必要とする子どもは増え続けています。
看護師が確保できず保育園に預けられない保護者が多い
医療的なケアは、医師や看護師など資格を持つ人か、保護者しかすることができないと法律で決められています。
そのため、保護者が保育園に預けたくても「看護師が確保できない」という理由で申し込めないケースが多くありました。
また学校においても常に保護者が付き添うように求められるケースが多いです。
このような医療的ケア児は家族に大きな負担がかかります。仕事を続けたくても続けられない人も多いです。
地域格差が大きい現状
大阪府豊中市は市立病院から看護師を派遣し、医療的ケア児が保護者の付き添いなしで通学したり、他の子どもと机を並べて勉強したりしています。しかし、このように手厚いサポート環境が整っている自治体はまだまだ少なく、保育園や学校に通わせるため、わざわざ引越しをしてくる家族もいるそうです。
看護師の配置支援が盛り込まれ、介護福祉士も医療ケアができるように
「医療的ケア児支援法」には、国や地方自治体に対して、保育園や学校に看護師を配置するように支援する責務が盛り込まれています。
保護者の学校への付き添いが解消されて地域の格差が縮まっていくことが期待されています。
しかし、ただでさえ看護師が不足している世の中。学校や保育園での子どものケアには介護福祉士も担い手になれるように法律に盛り込まれました。
現在、看護師が足りずに週に2日しか通学できない子どもがいるそうです。このような子どもが毎日通学できるようになるかもしれません。
また、保育園に預けやすくなれば、仕事を続ける保護者も増えていくかもしれません。
2021年7月8日(木)朝日新聞朝刊より出典・引用しています。
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