いよいよ2019年10月から幼保無償化が始まります。しかし各自治体は、指導基準に満たない無認可保育施設を無償化にするかどうかで揺れています。
政府は、保育の質が懸念される無認可施設を無償化にするのは基本的に反対の立場。しかし、各市町村に委ねるとしています。
朝日新聞の調査では、全国の主要75自治体で、「無認可施設は無償化しない」と決めたところはわずか2自治体にとどまりました。
目次
無認可園でも5年間の経過措置で無償とする
政府は、指導基準を満たさない無認可施設でも、経過措置として5年間は無償の対象とする、としています。しかし、保育の質が疑問視される無認可施設まで無償化することに全国の市長会が反発しました。
結果、各自治体が定める条例で無償化の対象となる無認可施設の範囲を決められるようにしました。
「無認可施設は有償のまま」としたのは2自治体だけ
朝日新聞が行ったアンケートによると、無認可園は有償のままとする、とした自治体はわずか2つ。待機児童がゼロの東京都杉並区と、保育の質を懸念する埼玉県朝霞市だけでした。
無認可施設は待機児童の受け皿になっている実態が浮き彫りに
主要な75自治体のうち、届け出のあった無認可施設も全て無償化の対象とする意向を固めているのが47自治体で全体の63%、検討中なのは26自治体で35%となっています。
これは、無認可施設が待機児童の受け皿として重要な役割をになっていることを示しています。
「劣悪な環境の無認可施設になぜ公費を使うのか?」という意見がある一方、「無償で良質な保育を受けられる子ども」と「有償なのに保育環境が劣る園に通わなければならない子ども」が出てきてしまいます。これは保育の公平性という面から問題があります。
「無認可施設の扱い」という一番肝心な点は自治体丸投げ?
保育中の重大事故は無認可施設で多く起きています。そればかりか、自治体が把握できていない無認可施設もあり、立ち入り調査さえできない園もあります。
劣悪な環境の園までに無償化にして「保育施設としてのお墨付き」を与えることには問題があるのは重々承知でしょう。
今後も無償化を続けるのなら、各自治体が無認可施設を管理指導する体制を強化しなければなりません。それらをきちんと公表し、保護者が子どもを入園させる前に把握できるようしなければなりません。
幼保無償化は一見喜ばしい政策に思えますが、子どもの安全性だけ守られるように慎重に検討してほしいものです。
2019年7月8日(月)朝日新聞朝刊より