育児に奮闘するお父さんお母さん。我が子がなかなか泣き止まず、イライラが収まらなかった経験を、誰でも一度はしているでしょう。
時には心身共に疲れ果てて、赤ちゃんを強くゆすぶったり投げたりしてしまうこともあるでしょう。これは決して珍しいことではなく、誰にでも起こりえることです。
保育士として働いていると、子どもだけでなく、保護者の気持ちに寄り添うことも多々あります。
辛い思いをしている保護者に、よいアドバイスができるといいですね。
「助けて!」「しんどい!」お父さんお母さんの声
・夜中に泣き続けて布団になげつけてしまった。すぐに後悔し、自身が泣いてしまった。夫はなだめてくれたけど、寝かしつけを変わってくれなかった。
・1日でいいから夜ぐっすり眠りたい。
・とにかく一人になる時間を作って!
・母親の孤独は虐待に繋がることがよく分かった。
・夜泣きで寝不足が続き、会社の昼休みに寝てなんとか持っていた。
・保育士をしていて自分はプロなのに、我が子にはイライラ。身近に助けてくれる人や機関があるのは大きい。
・アパートでは子どもの鳴き声が響き、後ろめたい。
乳幼児の頭部外傷
乳幼児を激しく揺さぶったり投げつけたりすると、脳に損傷が起きたり、血管が断裂したりすることがあります。
軽い場合は嘔吐や不機嫌、ミルクを飲まないなどの症状がありますが、重くなると、けいれんがおきたり意識障害、呼吸障害が残ることがあります。
かつては乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)と呼ばれていましたが、最近は頭部への外傷を含めて、虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)と呼ばれるようになりました。
どうやっても泣きやまない時は、少しその場を離れて!
自治体が行っている3、4か月検診では、揺さぶりは3~4%、口をふさぐのは2~3%が経験している、と自己申告しています。
泣き止まない赤ちゃんに対し、虐待傾向の無い親でも感情が抑えられず、突発的にこのような行動に出てしまうことはあります。
赤ちゃんがどうしても泣き止まなくて我慢ができなくなったら、安全な場所に寝かせて、少しその場を離れて下さい。少し離れて自分を落ち着かせましょう。そして少し経ったら赤ちゃんの様子を見に行ってください。
無理やり泣き止ませようと思わないことです。こうやって揺さぶりや投げつけを回避しましょう。
子の利益を最優先に考える
子どもの家庭福祉の世界では、何か疑わしいことが起きたら、まず子どもの利益を最優先に考えなければならない、としています。
揺さぶりを受けた乳幼児になぜ重症の脳損傷がおきるのか、科学的なメカニズムはまだ解明されていません。そのため、加害者が自供しないと刑事司法で立証が難しくなるため、刑事裁判になっても保護者が無罪になるケースが多いとのこと。このため、病院が虐待を疑っても通報をためらう理由になっていると考えられています。
しかし、通報せずに後から虐待と判明することもあるとのこと。非常に判断が難しい問題です。
2020年7月19日(日)朝日新聞朝刊より出典