皆さんは赤ちゃんに粉ミルクをお湯で溶いて与えた経験はありますか?実習先の保育園で経験したことのある方も多いでしょう。
ミルクの缶には「必ず70℃以上のお湯で溶いて冷ましてから与えて・・・」と記載があります。なぜ70℃以上なのでしょうか?
もっと低い温度でもよく溶けるので差し支えないのではと思ったり、冷ましている間に赤ちゃんが泣きだして、「早く与えたいのに冷めないー」と困ったり。でもちゃんと理由があるのです。
ここではそんなミルクを溶く温度についてご紹介しましょう。
2023年3月4日(土)朝日新聞朝刊より
70℃は赤ちゃんを感染症から守る温度
世界保健機構(WHO)と国連食料農業機構(FAO)から、粉ミルクの調乳についてのガイドラインを発表されているのをご存じですか?それには2つのポイントが書かれています。以下に見て見ましょう。
【1】必ず70℃以上のお湯で溶かすこと
【2】作成後2時間以内に使わなかったミルクは破棄しなければならない
赤ちゃんがすごく泣くので、かなりお腹が空いているのかと思い、たくさん調乳したのに、あまり飲んでくれなかった・・・こんなことはよくありますね。
粉ミルクだって結構な値段。たくさん余ってしまったもったいないですが、赤ちゃんを感染症から守るためにはぐっとこらえて、2時間たったミルクは破棄しましょう。
粉ミルクを製造する過程で、完全に無菌状態にするのは難しいそうです。また、開封後にきちんと蓋を閉めて保管していても、微生物が混入することはよくあります。そのため、上記のようなガイドラインが作られたそうです。
「クロノバクター・サカサギ」という細菌に要注意!
クロノバクター・サカサギという細菌。聞きなれないですよね。この最近は家庭や自然界に多く存在しているそうです。また人の手にも多く存在しているのだとか。
特徴としてはとても乾燥に強く、粉ミルクだけでなく、乾燥した野菜からも見つかったことがあるそうです。
基本的にこの細菌は多くの人にとっては無害です。しかし、1歳未満の乳児や高齢者は、敗血症などを引き起こすことがあるそうで、注意が必要です。
もし重症になってしまった場合、髄膜炎を発症することがあるそうですので、気を付けなければなりませんね。
アメリカでは「クロノバクター・サカサギ菌」が原因で死亡事故が起きています
2021年9月~2022年1月、アメリカではクロノバクター・サカサギ菌による中毒が発生しました。
同じメーカーの粉ミルクを飲んだ4人の赤ちゃんが感染症を発症。2人が亡くなったそうです。
当メーカーはリコール。その時期に一時的ではありますが、米国内で粉ミルクが品薄になったそうです。
ですが、その後状況は一転します。
患者の細菌の検体と、メーカー側の細菌の検体を詳細に分析したところ、遺伝子的に近縁ではなかったことが判明しました。さらに、患者同士の検体も合致しなかったとのことです。
要するに、死亡事故の原因は粉ミルクメーカ内での製造過程に存在していたクロノバクター・サカサギ菌ではない、とういことになります。
となると、考えられる原因はやはり「70度以上のお湯で溶かなかったこと」、または「作り置きしたミルクを与えたこと」。ですから70℃以上という温度は必ず守るようにしましょう。