出生時に体重が2,500グラム未満であった低体重児にとって、市販のベビー服は大きすぎてしまいます。そのような状況を目の当たりにした母親が、小さく生まれた赤ちゃんにぴったり合う服を作ろうと、努力を重ねている方がいらっしゃいます。
(※2024年9月6日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
小さな命に寄り添う服作り。中須賀舞さんの挑戦
広島市にお住まいの中須賀舞さん(35歳)は、次女の望ちゃん(3歳)が2021年4月に1780グラムで生まれたことをきっかけに、ある取り組みを始めました。望ちゃんは誕生直後に新生児集中治療室(NICU)に入院しましたが、退院の準備を進める際に百貨店で肌着を探したところ、一番小さいサイズでも45センチと大きすぎて、服が余ってしまう状況でした。
中須賀さんは服飾の専門学校で学び、アパレル販売員の経験もありました。その経験を活かし、小さく生まれた子どもたちの親が自由に服を選べるような市場を作りたいと考えました。また、子どもに合った可愛い服を着せて、「こんなに小さかったんだ」と思い出として残したいという思いもありました。
こうした思いから、低出生体重児向けのブランド「LIKO(リコ)」(https://likobaby.com)を立ち上げ、2022年10月から販売を開始しました。サイズは1500~1900グラム(約30センチ)と2000~2400グラム(約35センチ)の2種類を展開しています。
中須賀さんは、新生児だった望ちゃんを抱っこしたときの感覚を思い出しながら、腕の細い赤ちゃんにも合うようにと、縫製工場のパタンナーと何度も相談を重ねて、「これくらい袖をつまんでほしい」と丁寧に作り上げました。
中須賀さんは「このブランドが、大手メーカーでも小さい赤ちゃん向けの服を作るきっかけとなれば嬉しいです」と語っています。
手縫いキットに込めた思い-NICUでの経験から生まれた支援活動
沖縄県北谷町にお住まいの栗原涼子さん(45歳)は、低出生体重児向けの短肌着(30センチサイズ)の手縫いキットを販売しています。この取り組みの背景には、彼女自身の長男・雄くん(9歳)の出産経験があります。
雄くんは676グラムで生まれ、栗原さんは毎日2回、昼は1人で、夕方は夫とともにNICUを訪れていました。1人で面会する時間は、ただ祈るように赤ちゃんを見守るしかできず、もどかしさを感じていたといいます。
雄くんが小学校入学を控えた頃、栗原さんは小さく生まれた子どもを育てる親の会に参加するようになりました。そこで子どもが入院中の家族に出会うと、当時の記憶がよみがえり、「搾乳や面会以外にも何かできることがあれば、気持ちが少しでも楽になっていたかもしれない」と考えるようになりました。
その思いから洋裁を学び、2023年4月には自作の肌着の完成品と手作りキットを、沖縄県内のNICUがある病院に寄贈しました。当初はボランティアとして取り組むつもりでしたが、夫から「起業すれば県外にも届けられる」と助言を受け、同年に「Angelin(エンジェリン)」(https://littlebaby-smallwear.hp.peraichi.com)を立ち上げました。
手縫いキットは、生地を型紙に合わせて裁断済みの状態で提供され、作り手は針と糸だけを準備すれば良い仕組みです。これにより、親が手軽に子どものための肌着を手作りできるようになっています。
栗原さんは、「低出生体重児を育てる方々には、心の支えになる場所が必要です。全国にリトルベビーサークルがあるので、ぜひつながってみてください」と呼びかけています。