
大型連休後の5月や、年末年始の休暇明けは、不登校の児童・生徒が1年の中で特に増える時期とされています。
特に5月は、新年度が始まってから約1か月が経過し、緊張や疲労が蓄積しやすいことが要因の一つと考えられます。
さらに近年では、春に行われる運動会が精神的な負担となり、不登校のきっかけになるケースも見受けられるようになっています。
(※2025年5月8日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
連休明けの不登校に備えて 子どもと向き合うためのガイドが登場
東京に本社を置く「キズキ」は、不登校の子どもたちを対象とした個別指導塾などを運営している団体です。
このキズキは今年4月、大型連休後に増加しやすい不登校への備えとして、保護者向けのガイドブックを制作しました。
子どもとの接し方に関するアドバイスなどが掲載されています。
キズキによれば、ゴールデンウィーク明けは毎年、不登校に関する相談が特に増える時期です。
新学期が始まってから1か月ほどが経過し、子どもたちの心身に疲れがたまるタイミングであることや、緊張していた気持ちが連休中に緩むことで、学校に行けなくなるきっかけになりやすいとされています。
ガイドブックでは、登校を避けたくなる主な背景として、人間関係への不安▽体調の不調▽学業に対する不安、の3点を挙げています。
また、「仮病を疑わない」「怠けていると決めつけない」といった接し方の注意点も明記されています。
さらに、「宿題を細かい作業に分けて取り組む」など、実践しやすい工夫も紹介されています。
中には、自分でも理由がわからないまま「学校に行きたくない」と感じている子どももいます。
そのような場合は、原因を無理に聞き出そうとするのではなく、「悲しい」「つらい」といった感情に耳を傾け、気持ちに寄り添う姿勢が大切だとされています。
自身の経験をもとに不登校の子どもと家族を支えるガイドを制作
ガイドブックの作成に携わったキズキの伊藤真依さん(26)は、自身も高校時代に不登校を経験したといいます。
「連休明けは、不登校の子どもたちにとって特に苦しい時期で、罪悪感を抱きやすくなります。保護者もどう対応してよいか戸惑うことが多いです。もし当時の自分や家族にこうした資料があれば、きっと支えになったと思います」
と語っています。
このガイドブックは、キズキが運営しているウェブメディアの専用申し込みフォーム
https://form.run/@futoko-perfect-guide
に必要事項を入力することで、どなたでも無料でダウンロードすることができます。
「普通」がつらい子どもたち、運動会が不登校のきっかけに
小1から小6までの不登校の子どもを受け入れている、学研グループのフリースクール「みらいゲート秋葉原」では、毎年5月から6月にかけて、相談件数が最も多くなる傾向があるそうです。
施設長の阪本美樹さんは、原因は一概には言えないとしつつも、5月に運動会を実施する学校が増えていることが、影響の一つになっているのではないかと話します。
阪本さんによると、相談の中で最も多く見られる子どもの傾向は、「集団活動が苦手」であるということです。
「運動会では『みんなで頑張る』という空気がいつも以上に強くなります。そのため、集団が苦手な子どもにとっては、大きな負担になりやすいのです」と語ります。
同施設では、3年前の開設以来、「運動会がきっかけで学校に行けなくなった」という声が複数寄せられています。練習の段階で心が折れてしまう子や、無理をして本番までやりきったものの、終わったあとに体調を崩すケースもあるそうです。
東京都に住む47歳の女性の次男(当時小4)も、そうしたケースの一つです。
次男は小1の5月から登校を渋るようになりました。その時期は、ちょうど運動会のダンス練習が行われていた時期で、もともと集団行動が苦手だった次男は「運動会には行かない」と言い出しました。
当日はなんとか登校し、周囲と一緒に踊ることができたものの、表情からは楽しさが感じられなかったそうです。
母親は「運動会は本来楽しいものだと思っていましたが、彼にとっては違って見えていたのかもしれません。
『普通』が、彼にとってはとても高いハードルだったのだと思います」と振り返っています。
