運動やスポーツをしない子どもが増える中、宮城県角田市が小学校入学前の子どもたちに遊ぶ習慣を身につけてもらおうと独自の取り組みを行っていると聞き、4月に訪問しました。
(※2024年6月4日朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
角田市のスポーツ振興への取り組み:「スポーツネットワークかくだ」の活動
中心となって活動しているのは、角田市スポーツ協会や市などが2019年に立ち上げた「スポーツネットワークかくだ」です。当初は人口減少に対応するため、スポーツ施設を拠点にプロスポーツの公式戦や合宿を誘致し、交流人口を増やすことを目指していました。
運動習慣を育む「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」の取り組み
しかし、課題を探ると、保育現場からは、外遊びをする子どもとしない子どもが二極化し、運動が苦手な子どもが増えているという声が寄せられました。そのため、子どもの運動習慣作りを最優先課題として、仙台大学の専門家から助言を受け、「かくだ版アクティブ・チャイルド・プログラム」を作成しました。
興味深かったのは、市内の保育園などで教える「出前講座」で、なるべく競争がなく、運動が苦手な子どもでも楽しめる遊びを採り入れていたことです。例えば、「しっぽ取り」では、自分のしっぽを取られても、コート外にあるしっぽを回収して再び戻れるルールにしました。子どもたちはこのルールを理解し、しっぽを取られたら終わりではなく、何度もトライするようになりました。
子どもの運動意欲を高める遊びの工夫とその成果
それまでは、遊びと称しても競い合い、誰かと比較されることで無力感を感じてしまう子どもがいました。「単なる鬼ごっこや、いす取りゲームはやらないようにしている」と語った保育士の言葉が印象に残っています。
さらに興味深いのは、笹川スポーツ財団がこの取り組みを継続的に研究していることです。財団が2020年度から保護者に行ったアンケートでは、出前講座後に子どもが体を動かして遊ぶようになり、保護者を運動に誘うようになったというデータがあります。いかに楽しんでもらえるかを試行錯誤している現場は、こうしたアンケート結果が出たことによって、取り組んできたことに確信を持つことができています。
今後の課題と未来への展望:小学生への運動習慣の継続支援
今後の課題としては、出前講座を経験した子どもが小学生になった後、外遊びやスポーツにどのように取り組んでいくかが挙げられます。過度な競争意識を強いられることなく、達成感を得られるような選択肢を増やしていけることが望ましいです。
子どもがどのようにしたら運動に前向きになれるのか、角田市の取り組みには他の自治体も参考にできるヒントがあるかもしれません。