学校や園の風土が計測できたら「いじめ」は減る?|保育士資格取得スクール

学校や園の風土が計測できたら「いじめ」は減る?

育児・子育て 2024年10月12日 キーワード , , , , , , ,

「学校風土」という言葉が注目を集めております。これは、学校が子どもたちにとって過ごしやすい環境かどうかを考える視点であり、文部科学省では計測ツールを活用して学校風土を「見える化」することを推奨しています。しかし、現場の教師などからは、データとして現れる子どもたちの様子に対して戸惑いの声も上がっているようです。
来年小学校に上がる児童を持つ保護者なら気になるかもしれませんね。もし話題に上がったら、こちらの「風土計測」の記事を読んでもらってくださいね。
(※2024年7月23日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

学校風土調査で子どもの声を把握し早期支援へ

多様性の尊重や相談しやすい環境など、子どもたちの意見を分析することで「悩みの早期発見」にもつなげようとしています。6月27日、東京都品川区の区立鈴ケ森小学校では、6年生の児童たちが各自の端末を使って質問に回答していました。教員が質問項目を読み上げると、児童たちはそれぞれの直感で回答を進めていきました。
回答を終えた岩田結葵さん(11歳)は、「質問が短くて理解しやすく、選択肢を選ぶだけなので、友達に見られる心配もありませんでした」と話してくれました。
この調査は、公益社団法人「子どもの発達科学研究所」が開発した「子どものための『学校風土調査』」です。子どもたちに約40の質問を投げかけ、その結果を全国的なデータと比較することで、学校風土の状況を把握するツールとなっています。
品川区では今年度から、全46の区立学校でこの調査を導入しました。年2回の学校風土調査に加え、専門家によるフィードバックや教員向けの研修なども含めて、約6千万円の予算が投じられています。

学校風土調査によるいじめ対策と不登校防止への取り組み

背景には、いじめ問題に対する強い危機感がございます。品川区では、2020年に発生した中学生へのいじめ事案について、被害者が心身に重大な被害を受ける「重大事態」と認定されるまでに2年以上を要したことから、学校と区教育委員会の対応が不十分であると批判を受けました。
区教育総合支援センターの丸谷大輔センター長は、「いじめを適切に認知するだけでなく、早期発見や未然防止も重要です。学校風土の計測は、いじめが起きにくい学校づくりを進める際の一つの指標になる」と述べています。
また、学校風土の計測は不登校対策にも役立つとして、文部科学省もこれを推奨しています。昨年公開された「学校風土の把握ツール」には、子どもの発達科学研究所の調査を含む5つの民間ツールが紹介されており、多様性の尊重やルールの遵守、相談しやすい環境があるかどうかなどが質問内容となっています。これらは教職員の経験や考え方に左右されず、エビデンスに基づく分析によって子どもの課題や悩みを早期に発見できることを強調しています。
しかし、集められたデータを実際の教育現場でどのように活用すべきかについては、多くの教員が悩んでいるのが現状です。

学校現場での「i-check」活用法と教員研修の現状

6月27日、昭和女子大学附属昭和中学・高校(東京都世田谷区)で、全教職員を対象とした研修が開催されました。研修の内容は、教科書出版大手の東京書籍が開発し、文部科学省も計測ツールの一つとして紹介している「i-check」の活用法についてです。
「i-check」は集団全体の雰囲気だけでなく、個人の状況も把握でき、生徒本人も自身に関する内容を確認することができます。担当の鈴木てるみ教諭は、「生徒が多様化し、クラス運営が難しくなっている中で、データから得られる手がかりは非常に有用です」と評価しています。
ただし、「i-check」の質問数は多く、高校生の場合、100問以上に及ぶこともあります。27日の研修では、約80人の教員が厚いファイルを参照しながら、開発に携わった専門家の話に耳を傾けていました。
質疑応答の時間には、教員から「データの科学的正確性についてどこまで信頼できるのか」「常に低いスコアを出す生徒は何らかの問題を抱えているのか、それとも自己評価がもともと低い傾向なのか判断に迷う」といった質問が寄せられました。
このような疑問は多く寄せられており、東京書籍では教員向けのデータ分析資料を作成したり、各地で研修を行ったりして教員の疑問解消に努めています。
担当者は、「実際に子どもたちと接する教員が主役であり、ツールはあくまでサポートに過ぎません」と強調し、「データの結果に一喜一憂するのではなく、それをもとに教員同士で積極的に話し合ってほしい。そのような学校は、長期的に見ればデータも良い傾向を示すことが多いです」と述べました。